伝統技法「注染」の魅力に触れる

注染とは?やさしい滲みが美しい伝統技法

むかし懐かしい、手作業から生まれるやさしい滲みがうつくしい 本染め「注染」

注染の大きな特徴は、職人の手作業によって生まれる独特の味わいにあります。
注染(ちゅうせん)とは、布に模様を染める技法のひとつであり、日本独自の伝統技法です。反物に形紙で染めない部分に糊を付け、乾燥後に染める部分に土手を作り、その土手の内側に染料を注いで布を染め上げます。

この注ぐ作業から注染(ちゅうせん)と呼ばれるようになりました。

注染と他の染技法との違い

注染染めは、他の染色技法と違い、注染ならではの独特な染め方があります。
例えば、友禅といった技法では、一つひとつの色や柄を丁寧に描き出していく工程が主流ですが、注染では特殊な糊を使って染料を注ぎ、一気に染め上げる手法となります。

注いだ染料は布の下側に抜けるため、布の芯まで染まり、裏表なく柄が鮮やかに染まります。
また、色が自然に混ざり合うことで生じる独特のグラデーションも特長です。職人の熟練した匠の技術から生み出される、これらの繊細かつ細やかな表現は伝統産業で現在も広く愛されています。

染め上がるまでの工程 - 手作業の魅力 -

はじめに。生地と形紙の準備

●和晒

生地を精錬して漂白する「晒」は、浴衣の下晒には欠かせない工程です。
和晒は、約2日ほどかけて精錬されるため、生地に負荷をかけることなく自然な防縮加工を施すことができます。そのため肌触りの良いやわらかい生地に仕上がります。

●形紙づくり

形紙を細い刃先の彫刻刀で模様を掘り抜きます。繊細なデザインほど細かく、職人のこれまでの経験や知識、技術が光る工程です。

 

染めないための糊付け

晒を行った生地を洗い、乾燥させた後は糊置きと呼ばれる糊付けを行っていきます。
形紙を生地の上に設置したあと、特殊な糊をヘラで塗り、生地を折り返してはまた糊を塗るといった工程を繰り返します。この作業を行う場所や職人さんは「板場」と呼ばれます。

糊付けされた箇所は染料を流しても染まらず白く残るため、あえて染色しないデザインを表現するのに重要な役割を果たします。糊付け後は糊を固定するため表面におがくずをまぶします。

 

染めのいのち。土手と染色

次に染料を注ぎ込む工程が始まります。職人は染色枠を設置し、染める箇所の周囲に土手を作ります。これは染料が広がらないようにするための技法です。染める色ごとに、特殊糊を絞り出し、囲いを作るのです。


土手を設置したらいよいよ染色です。ジョウロのようなやかんに染料を入れ、土手にあわせて一色一色丁寧に染料を注ぎ込みながら染め進めるこの工程は、色がうつくしく混ざり合い、注染特有のぼかしやにじみの表現が生まれる鍵となります。


コンプレッサーで下から染料を吸入し、生地の表裏にしっかり染料を通します。この作業を行う職人さんは壺人とも呼ばれており、壺人の豊富な経験と感覚を活かした熟練の技が生地をうつくしく染め上げていきます。

 

浮き出るうつくしい色。水洗いと天日干し

染色を終えた後は綺麗に仕上げるため、丁寧にふり洗いします。
この工程では、生地に残った余分な糊や染料を洗い流し、本来の鮮やかな色と美しい模様を引き出します。この作業を浜と呼びます。水洗いの後は、大きな遠心分離機で十分に脱水し、室内干しで乾燥させます。


生地をかける梁の上は人が登れるようになっており、長い反物は畳むことなく、そのまま干すことができます。これにより、染料が自然に定着し、注染ならではの風合いがより引き立ちます。乾いた反物は縫製され、仕立てられていきます。

 

ライフスタイルに溶け込む注染

注染染めは、主に手ぬぐいや浴衣などの染色に用いられてきました。
注染の浴衣は、生地全体に染料が均一に染み渡るため、両面がうつくしく仕上がるのが特徴です。注染だからこそ生まれる奥深い色味や柄は、実用品としてだけでなく、夏に映える伝統美として現代でも人々に愛され続けています。

浴衣や手ぬぐい以外にも、ふきん、ストール、ハンカチ、お弁当包みなど、注染の商品はたくさんあります。特に手拭いやふきんは、使い込むほど生地が柔らかくなり、使い心地が良くなる点が魅力です。また、色あせしにくいといった特長も兼ね備えており、長く愛用できるため、日常生活で活躍するアイテムとしても注目を集めています。

 

 

utataneスタッフが感じる注染染め

注染染めは、気の遠くなるような手仕事につぐ手仕事の連続で、集中力が欠かせません。
現場は、静かながらもふつふつと沸く熱気と緊張感に包まれています。

長年の経験に基づく熟練職人の技と勘、新進気鋭のアーティスト肌職人による新しい試みがぶつかりあって生まれる、ハンドメイドならではの奇跡だと感じます。
活気と気迫じゅうぶんな職人さんたちが生み出す、うつくしい滲みや質感。工業製品では出せないその表現に、utataneスタッフはもう虜です。
注染職人さんの作業場にお邪魔すると、いつも明るく元気に迎えてくださり、パワーをいただきます。

utataneと注染

utataneでは、大人浴衣やこども浴衣をはじめ、手ぬぐいなどの注染染め商品を取り扱っております。

utataneオープン時期から取り扱ってきた思い入れのある注染浴衣ですが、現在はさまざまな事情で、1枚の浴衣が出来上がるまで相当困難なものになってきました。

●染料・生地不足

注染で染めるためには、染料はもちろん生地も必要です。一般的に流通している広幅の生地ではなく、小幅の生地が必要になります。しかし、継承者不足などにより、小幅生地を織る工場の閉鎖が相次いでいます。
そのため、注染に欠かせない染料や生地の不足・生地価格の高騰・生地の納品まで数年かかる等、生地を確保すること自体が困難な状況です。

●加工業者の現象

染め工程以外にも必要となる晒や整理直し、縫製などを行う加工業者も減少しているのが現状です。

●注染職人も激減

繊細な技術を要する注染職人も高齢化や継承者不足で数えるほどになってきており、注染浴衣は非常に希少なものになりました。

utataneは、これからも注染浴衣を取り扱い続けることで、注染技術の継承のお手伝いができればと思っています。
そんな思いで生まれたutataneオリジナルデザインの注染商品をぜひご覧ください。